インターネットの設計思想
1950年代中頃まで、コンピュータが他のコンピュータと繋がることは想定されておらず、 人が「実験結果」を持ち帰っていました。一般に「インターネット」と呼べるものは1990年代以降です。 その源流をたどります。
ARPA 設立
米・高等研究計画局(Advanced Research Projects Agency)。ネットワーク研究がここから始まった。
ARPANET プロジェクト開始
世界初のパケット通信ネットワークの研究プロジェクト。データを「パケット」に小分けして転送し、受信側で復元する方式。
4拠点を接続
UCLA・UCSB・ユタ大・スタンフォード研究所(SRI)。伝送路を複数用意し、障害があっても迂回できる冗長構成。
相互接続と TCP/IP の誕生
独立したネットワーク同士を ARPANET で相互運用(Inter-Networking=Internet の語源)。 「エンドツーエンド」「ベストエフォート」の思想から TCP/IP が生まれる。
一般に広がる「インターネット」
多種多様な機材やネットワークをつなぎ、冗長性で信頼性を高めた自立分散型ネットワークとして社会基盤に。
ネットワークの階層化 — OSI 参照モデル
通信機能を役割ごとに分類し、複数の「層」で構成します。各層ごとに プロトコル(通信規約)を用いるので、スマートフォンでもスーパーコンピュータでも同じ手順で通信できます。 層をクリックして役割を確認しましょう。
ヘッダ・フッタのカプセル化
送信側では、上位層から下位層へ降りるたびに各層がヘッダ・フッタを追加します。 受信側では逆に、下から上へ昇るたびに削除します。▶ を押して、メッセージが1つのパケットに包まれていく様子を見てください。
1つのパケットの中身
中央のメッセージを、各層のヘッダ(H)とフッタ(F)が同心状に包んでいます。
各層のヘッダ・フッタが運ぶ情報
- 物理層:物理的な接続に関する情報
- データリンク層:通信機間の信号の受け渡し
- ネットワーク層:通信経路の選択(ルーティング)
- トランスポート層:エラー訂正・再送制御
- セッション層:通信が途切れた場合の接続回復
- プレゼンテーション層:データの表現方法
- アプリケーション層:通信サービス・アプリに関する情報
OSI 7層 ↔ TCP/IP 4層
実際のインターネットは TCP/IP でまとめられます。
要求(request)と応答(data)
電子メールやWWWなどはクライアント・サーバモデルです。クライアントが要求を送り、 サーバがデータで応答します。▶ を押すとやりとりが流れます。
IPアドレス — インターネット上の「住所」
通信には送信元と送信先のIPアドレス(コンピュータを識別する数値)が必要です。 IPv4 は 32ビット空間で、8ビットずつ「.」で区切って10進表記します。 数字を変えて、2進表現とアドレスクラスの変化を確かめてください。
法政大学 133.25.XXX.XXX は Class B。例 mailgw.hosei.ac.jp。
IPv6 は 16ビットずつ16進で表記:2404:6800:4004:80b::2004。
ポート番号 — 同じ宛先でも通信を混同しない
IPアドレスだけでは通信が混乱するため、トランスポート層のポート番号で相手のサービスを指定します。
よく使うサービスには 0–1023 の well-known port が割り当てられています。
| サービス | プロトコル / ポート | 役割 |
|---|---|---|
| HTTP | TCP / 80 | Web ページの転送 |
| HTTPS | TCP / 443 | 暗号化された Web 通信 |
| SMTP | TCP / 25 | 電子メールの送信・転送 |
| DNS | UDP / 53 | 名前解決の問い合わせ |
| POP3 | TCP / 110 | メールの受信(取り出し) |
| IMAP | TCP / 143 | メールの受信(サーバ保管) |
DNS — 名前解決の流れ
IPアドレスは数字だけで扱いにくいので、人間が使いやすいドメイン名を用います。
ドメイン名に対応するIPアドレスを求めることを名前解決といい、木構造をたどって問い合わせます。
ICANN という非営利団体が空間の一意性を管理しています。
▶ 次へ で www.example.co.jp の名前解決を1ステップずつ追えます。
http://www.example.co.jp/ と入力します。ドメイン名空間は木構造
ルートドメイン(.)の下に国別など(ccTLD/gTLD)、さらに第2・第3レベルドメインが続きます。
WWW — 世界に広がった蜘蛛の巣
WWW(World Wide Web)は、インターネット上の文書同士をハイパーリンクで相互参照するサービスです。 HTTP / HTTPS でやりとりし、これもクライアント・サーバモデル。文書は URL という識別子で指し示します。 下の URL を編集すると、構成要素に色分けされます。
電子メール
コンピュータネットワークを介してデジタルデータを郵便のように交換する 非同期通信システム。送信・転送は SMTP、受信は POP3 / IMAP を使います。
SNS
「誰でも・いつでも・どこでも」情報を受発信できる、従来メディアと大きく異なる特徴。 一般の人が自由に発言・表現しやすくなりました。
基礎
教科書
『情報学基礎』培風館 ISBN 978-4-563-01605-0
この講義でたどった道すじ
インターネット
ARPANET を源流とする自立分散型ネットワーク
プロトコル
各層の通信規約。国際標準化されている
階層化
OSI 7層 / TCP/IP。カプセル化で包む
クライアント・サーバ
request と data のやりとり
IPアドレス・ポート
住所と、サービスを指す番号
具体的なサービス
DNS・WWW・電子メール・SNS